ばらまかれる棺


タイトルから察せられるとおり、
これはあまり気持ちのいい話ではありません。


しかも実話。



封印された、決して誰も入ることのない納骨堂に、静かに収納されている棺たち…。
しかしある時封印がとかれてみると、なぜか激しく荒らされた痕がある───

これが「ばらまかれる棺」と呼ばれる事件です。こうした現象は、まれではありません。

荒らされた棺の様子は、目を覆わんばかりのものです。
ある棺は破壊され、くぎで打ちつけたはずのフタが半ば開き、腐敗した遺体の一部が露出している状態です。
またある棺は、どう考えても壁になげつけられたのだとしか思えない状態で、はるか遠くに投げ出されています。

一体誰が?
なんの目的で、こんな酷いことをするというのでしょう?
不幸にもこの事件に遭遇した人々は、胸をいため、いぶかり、何よりもその異様さに、恐怖してきました。

しかし、こうした惨劇を説明するのに、有力な説がいくつかあります。
その一つは、「早すぎた埋葬」です。

いまだ医学の夜明けが訪れぬ時代、人々は仮死状態というものを知らず、生き返るチャンスがある患者をも死者と判断して、棺に封じてしまうことがあったといいます。
あやまって葬られた生者の苦しみは、想像を絶するものでした。爪がはがれるほど蓋をかきむしり、暗黒の中で喉もかれよと叫んだことでしょう。
しかし、納骨堂は封印され、その叫びをきく者もありません…。

「早すぎた埋葬」の被害者の中には、壮絶な戦いの果てに素手で釘を引き抜き、棺から半ば脱出することに成功した者もいました。
こうした遺体を、「何者かが墓を荒らし、遺体を引きずり出したもの」だと誤解した…

これが、全ての「ばらまかれる棺」の正体なのでしょうか?


いいえ、これでは説明できないケースがあります。
と、いうより、「ばらまかれる棺」事件の大半が、説明不能なのです。
なぜならほとんどの場合、ばらまかれる棺は、一つではないからです。
事件の大抵が、棺が満数となったために封印された納骨堂で起こり、その場にある全ての棺が動かされているのです。もちろん、棺の年代はマチマチです。埋葬後、数百年経った棺が動くケースもあります。…これは、とても早すぎた埋葬とはいえません。

もう一つの説をご紹介しましょう。
これはもう少し汎用性が高く、説得力のある説です。

もしも、納骨堂に地下水や雨水が浸水していたら…??

大雨、あるいはなんらかの原因による浸水があれば、棺は浮いたはずです。───そう、ばらまかれる棺事件で動く棺は、ほとんど全て木製なのです。
浸水によって浮き上がった棺は、水流のために容易に動くことでしょう。時にその流れが激しければ、壁や柱に打ちつけられて、こわれるかもしれません。いずれにせよ、水が引いたときに、もとの場所を動いていない確率の方が、低いはずです。

この論理的な推理によって、相当数のばらまかれる棺事件が解決しました。棺に浸水の痕跡があればもちろん、たとえそんなものがなくても、近くに河や海、または地下に水脈がある場合、遺族は喜んで、この説を尊重しました。

しかしもし…
それが乾燥地帯の墓地だったらどうでしょう?
水源からは離れすぎ、地下水脈は深すぎ、近頃100年あまりも大雨がふったことはない。そんな土地の、しかも厳重に封印された場所で起こったとしたら?

ある有名な「ばらまかれる棺」事件のケースが、まさにそれでした。
この被害者の家族は、したがって原因は人的なものと信じ、卑劣な墓あらしをなんとしても捕まえてやろうと決心しました。あらされた棺を納骨堂に収め直す時、床一面に、石灰の粉を撒いておいたのです。憎い犯人の足跡を残し、侵入経路をつきとめるためです。もちろん、正規の入口は、しっくいで塗り固めて置きました。

そして数ヵ月後。
封印を解いて検分してみると、調べるまでもなく、全ての棺がメチャクチャに投げ出されているのがわかりました。イチバン小さな棺などは、壁にぶち当たって棺、壁、双方にキズを作り、中から飛び出した子供の遺骸は、さがさなければ見つからないほど遠くにまで吹き飛んでいたのです。
けれども、どこにも侵入者の足跡はありませんでした。
ばらまかれた石灰の粉は、整然としていたというのです。

もしも、水が出ていたとしたら、粉はひとたまりもなく流れていたでしょう。「早すぎた埋葬」である可能性は、否定していいはずです。なぜなら最後に埋葬された家族も、数年前に死亡したものだったからです。
だとすると、残る可能性は、足跡を一つも残さず、石灰をそよとも動かさずに去った、墓あらしの仕業? それとも…。


近年、衛生上の面から集団納骨堂が減り、
ばらまかれる棺事件も結果的に減ってはいますが…。

棺をばら撒いた本当の犯人はも一体なんだったのでしょう…??


この事件には、
実はもっと科学的な第三の説があるのですが…
科学的だけどあまりにも気持ち悪いのでヒミツです。
知りたい人はニッキで聞いてください。(笑)